法人企業において投資などの意思決定をする場合は、かならず複数の過程を通ります。これらを把握することがDecision Processです。
Decision Processは案件初期と終盤に必要であり、非公式なプロセスと公式なプロセスの2種類存在します。
そうです「会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ!」というあの言葉通りなんです。
非公式なプロセス
法人企業の意思決定は複数人や複数部署を経て行われます。これが、B2Cと大きく異なる点でしょう。
日本では、後述する公式なプロセスの前に「非公式な過程」が存在するのが一般的です。
なぜなら、公式プロセスを何回も通すことは効率的でなく、事前にある程度承認を取っておくほうが企業内業務においてもやりやすいためです。
たとえば、1億円の案件をいきなり部長に稟議申請する人はおらず、かならず事前相談や討議を行います。大きな金額であればあるほど、事前プロセスが実施されます。
つまり非公式なプロセスとは、「事前相談」「下ネゴ」「口頭合意」などに当たります。
営業としてはここが勝負の時であり、ChampionやEconomic Buyerとの討議を、Decision Criteriaに沿ったMetricsを提示しながら、行っていきます。この場で合意が取れれば、あとは公式なプロセスを流すだけで終わりです。
これがまさに現場です。会議室の形式ばった会議体ではすでに終わっている可能性があります。
公式なプロセス
公式なプロセスはいわゆる「定例会議」や「稟議申請と承認フロー」です。
だいぶ無くなりはしましたが、紙の書類が各部門長の机のトレーに回り、承認印が次々に押されていくという場合もあれば、いまはシステム化が進み、システム上で承認をする場合もあります。
ここで注意点として、意外と別部署のプロセスが入っている場合があることです。
たとえばIT部門や財務部門、調達・購買部門あるいは法務部門ですね。非公式なプロセスが1つの部門内で完結していると、公式なプロセスにおいても、他部門が却下したり、審議停止をしたりすることもあります。
かならず公式なプロセスにおいてもリスクがないかはChampionに確認をしておきましょう。
Decision Processは案件初期と終盤に確認すべき – 案件初期 –
案件初期では、どのようなプロセスで意思決定されるのか、を確認しましょう。
まずは公式なプロセスを先に確認を行い、そのあとに非公式なプロセスを確認するということが自然です。
たとえば
「今回の弊社提案金額の場合ですと、どなたまで承認はあがりますでしょうか」
「部門長承認が終わった場合は、通例どの部門を通りますでしょうか」
「弊社製品の契約のための法務確認も必要と存じます。稟議と並行して実施できますか、あるいは稟議が終わってからでしょうか」
「それぞれのプロセスで納期はどの程度かかりますでしょうか」
などの質問です。
一般的なパターンとしては、
申請部門 → IT部門 → 財務部門 → 法務部門 → 調達・購買部門
という流れになるでしょう。
調達部門で最終価格交渉に入るということも多いです。
納期は、通例1か月程度、大企業になると2か月程度かかる場合もあります。各部門での確認項目が多いことと、多くの投資案件が回ってくるため1つ1つ処理していると順番が来るまで時間がかかること、が原因です。
そのあとに、
「いきなり稟議申請をするのではなく、事前相談などもされると思います。どなたにどういった会議体で行われますでしょうか」
と非公式なプロセスを確認していきます。
「どなたに」という点と「どういった会議体」という点を情報収集することが重要です。
どなたに=Economic Buyerですが、会議体も併せて確認することがコツです。
気軽にいつでも役員(Economic Buyer)から時間をもらえる強力なChampionであれば、ミーティングが行われた当日か翌日ぐらいに話を持って行っていただけますが、通常は週次などの定例会の場で議題として挙がります。
Decision Processは案件初期と終盤に確認すべき – 案件終盤 –
案件初期でヒアリングを行うことで、
すでにどのプロセスがどの程度の納期がかかり、何日後に契約ができるか
がわかっている状態になっています。
非公式なプロセスまで完了して、Economic Buyerの合意も得られたとしましょう。
すでに終盤状態になっていますが、この時点で営業としてもっともやってはいけないことは、
「案件を後ろ倒しすること」=絶対NG
となります。
公式なプロセスで間に合わないから、案件が次の月の受注になります、というのはかなり痛いです。
終盤ですべきことは、
「お客様が行うべきアクションアイテムと自社が行うべきアクションアイテムをリスト化」
「プロセスに従って、それらをつないでいく」
「リスクをリスト化して、追記」
「最終的にカレンダーに落とし込んで記載」
「契約締結日は、月の最終稼働日ではなく、3~5日前に設定」
となります。
線表で行う手法もありますが、「休日は暦通り」という言葉がよく使われる通り、カレンダーに落とし込むほうがお客様の公休日や夏休み・年末年始休暇がお互いにわかります。
DJは以下のようなカレンダーフォーマットを使います。
まとめ
意外と抜け漏れているのが非公式なプロセスです。お客様社内の力関係や政治力学も学べるので、ぜひ確認をしましょう。
案件初期にDecision Processを確認することは、お客様にも「ああ、いついつまでに稟議は書かないといけないな」と考えていただくきっかけにもなります。
また自分が持つ案件がいつにクローズ(受注)できるのか、というフォーキャスティングにも大きな影響を与えますので、ぜひ癖付けをしましょう。