【海外サイト】非上場外資IT企業(Pre-IPO)の選び方/3つの観点【秘伝】

コラム
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注:2022年下半期は米国インフラと利上げが続く市況で、株式市場にネガティブな大きな影響を与えています。

結果として、上場前企業がその企業価値(Valuation)を大幅に下げています。

また、連日のニュースの通り、上場しているメガIT企業でも、事業軸変更によってケイパビリティの大幅刷新を行うため、大量レイオフを実施しております。

入社の判断は自己責任でお願いいたします。

外資IT企業の内情調べ方では、大まかに全体的な外資系企業の調べ方を連携いたしました。

紹介される企業の多くは、すでに米国・欧州の株式市場に上場している会社で、上場後の資金をもとに各地域へのグローバル展開を進める場合が多いのですが、なかにはいわゆる

「Pre-IPO(上場前)」

というような、非上場のスタートアップ企業が日本市場に参入を行い、日本法人を立ち上げる場合があります。

なかなか情報がない中で、これら企業についての「安全性」について調べ方を伝授します。

Pre-IPO企業の選び方はヒト、モノ、カネの3つの観点

まずは「ヒト」!ファウンダー(創業者)、CM、パートナーを確認する

ベンチャーキャピタルが、スタートアップ企業に投資するか否かの判断の1つが

ファウンダー(創業者)に、その産業の専門知識があるかないか

となります。

スタートアップの創業者は、シリアルアントレプレナーもいれば、初めて企業を起こす人もいます。あるいは、ずっと異なる形態のサービス(たとえばコンサルティング企業)を行っていたが、ソフトウェアを外販して急成長を成し遂げる場合もあります。

いづれにしても、軸足を置く産業に長く在席をしているかどうか、というのは非常に注目すべき観点です。

もっとも責任があり、おそらく世界でも有数の頭脳を持つベンチャーキャピタリストが見ている視点は「人材」です。彼らの視点を借りて、創業者の専門性を確認しましょう。

次に、

日本法人社長(カントリーマネージャー)の略歴を確認

することが必要です。

グローバル戦略は重要ですが、他地域市場と異なる特性を持つ日本市場においては、日本市場戦略も重要となります。

ファウンダー/CEOと同様になりますが、経験値が十分かどうかはすでに見極めされているため、信頼に足る人物かどうかを面接で見極めることがよいでしょう。

最初に営業第一号を入れるだけでカントリーマネージャーがいないケースもあります。その場合は割愛でよいです。

最後にパートナーです。

「ヒト」は広義にとらえた方がよく、ここでは「事業推進するための人的リソースとケイパビリティのすべて。内外含む」としています。

パートナーはどこで、どのような実績があるか

ITベンダーのパートナーシップは大きく4種類です。

  • リセラーパートナー:製品ライセンスを再販する企業です。日本市場ではSler、IT商社などがパートナーになります。
  • コンサルティング、導入パートナー:自社製品の導入支援を行う企業です。リセラーパートナーが導入パートナーになる場合もあります。大手Slerだけでなく、Accenture、TATA、IBMなどのIT戦略コンサルや、」PwC、KPMG、EY、Deloitteなどのビッグ4ファームがなることが多いです。
  • テクノロジーパートナー:技術的にアライアンスを組む相手で、お互いにパートナーになります。相手は同じく外資IT企業です。外資IT企業がパートナーエコシステムと呼ぶのは、狭義ではこのテクノロジーパートナー群を指す場合が多いです。
  • OEMパートナー:企業があるソリューションを持ち、ベンダー製品を1つの部品として使う場合になります。エンドユーザーはベンダー製品は使わず、製品はあくまでバックエンドで機能します。

ここで最も重要なのは再販パートナーがどこかになります。大手Sler(NTTデータ、日立、富士通、NEC、IBM)がパートナーであれば、ある程度のビジネス成長は見込めると期待できます。

また彼らがすでに日本市場でどのような導入実績を達成しているかも確認をしましょう。

次に重要なのはコンサルティング/導入パートナーです。彼らは全社基盤など比較的大きなプロジェクトのみを扱うため、このパートナーと関係があるかどうかによって、年に1-2回程度巨大案件が期待できるかどうかが分かれます。

テクノロジーアライアンスは、日本オフィスからはコントロールできないため、見ているだけしかありません。しかし「超成長しているベンダーとアライアンスを組んでいるかどうか」は見ておく必要があります。大きなIT業界において、1社単独で拡大していけるベンダーはいません。メガベンダーであってもほかのIT企業とアライアンスを組み、エコシステム(生態系)を形成しています。

大きな理由は、IT領域はとても広く、それぞれが得意なベンダーが協力し合った方がよいためです。協力というのは、連携コネクター開発や独自ファイル形式相互変換、API連携というゆるやかなものから、がっつりと共同戦線を張っているケースもあります。

エコシステムはこのサイトで確認することもできます。

Partnerbase

つぎに「モノ」!日本市場で売れる製品なのかどうかのポイントもあり

製品についても以下の観点で見ていく必要があります。

1. ローカライズ(日本語化)されているかどうか

日本市場に参入するのであれば、UIの日本語化は必須でしょう。一部の専門職向けのソリューションの場合は必ずしも必須にならないケースもありますが(日本人ユーザーが英語で理解できる)、大きく拡大を狙っていくのであれば、まだまだ不得意な英語ではなく日本語で進めていく必要があります。

2. データセンターが日本にあるか

SaaSの場合はデータセンターが東京にあるIaaSを使っているかどうかは結構クリティカルになります。多くの企業においてIT部門が「他国にデータセンターがないことが望ましい」というクラウドポリシーをもっているためです。いくらユーザー部門が使いたいといっても使えない可能性があります。

オンプレ製品の場合は、どこに導入できるかがカギとなるため、「お客様IT環境でも、IaaSでもどちらでも導入できる」ということが条件になります。ソフトウェアアプリケーションの場合は、基盤はOSであるため、インフラ環境は大抵はどれも可能で、問題にならない場合が多いです。ミドルウェア以降は確認が必要となります。

3. 少なくともグローバルで認められた製品かどうか

他国(日本)の市場への拡大を狙っている時点で、本国市場では大きな伸びをしているはずですが、何分情報がないため、あらかじめ調べておきましょう。

調べ方は簡単で、以下の調査会社が認知をしているかどうかがポイントになります。

  • Gartner:数百あるIT領域それぞれでベンダーを4象限に評価した「Magic Quardrant」が有名です。”Gartner” “対象企業”でGoogle検索すると、Peer Insightというユーザー企業がベンダーを口コミで評価しているサイトも出てきます。Magic Quardrantの位置づけや、Peer Insightの採点などは評価として確認をしましょう。
  • Forrester:こちらも有名です。どちらかというと業務アプリケーションに特化して調査をしているようで、Garnterで出てこないアプリケーションも出てきます。Forrester Waveというベンダー評価レポートが使えます。
  • G2.com:こちらもベンダー評価をしているサイトです。GartnerやForresterに比べてより狭い領域のベンダーについても記載があるため、狙っている企業によっては、こちらに情報があるケース多いです。
  • Capterra:Gartnerに買収されていますが、こちらにも細かい領域の評価や競合製品としての比較が乗っています。非常に多くの企業が掲載されているため、比較自体が正しくない場合もありますが、乗っているか乗っていないかだけでも手助けにはなるでしょう。

おおよそこの4社の情報に、受けようとしている企業名の評価や記載がある場合は、選択肢として考えても問題ないでしょう。

最後は「カネ」!評価額=$1B、ファンド、ラウンド等

スタートアップ企業は世の中にゴマンとありますが、評価額1,000億円以上となった企業は「ユニコーン」として注目を集め始めます。

評価額1,000億円(USD 1 Billion)が、しきい値

評価自体は過去数年の売り上げ、成長率、今後の成長予測などを加味して専門家が決めていきます。

ユニコーンとなった企業はそれ以降も大きな成長が期待できますし、評価されている以上それなりに理由があります。まずは評価額=1 Billion Dollarsと閾値として捉えましょう。

ユニコーン企業については、多くのサイトがリストを出していますし、Crunchbaseでも現在の評価額を確認することが可能です。リストはCB insightなどで確認可能です。

どのファンドが出資しているか

どのファンドが出資をしているかどうかも確認のポイントになります。こちらもCrunchbaseや各社のHP上で確認が可能です。

ベンチャーキャピタルのリストもすぐに見つかります。セコイアや500が有名ですが、比較的大規模で、長期投資を行うベンチャーキャピタルの方が安心できるでしょう。

1点注意点です。明言は避けますが、あるアジア系ベンチャーファンドは「ほかのベンチャーキャピタルが初期ラウンドで評価し出資した後、中~後期まで成長軌道に乗ったさいに、評価額を吊り上げる目的で大型出資する。その後上場益を狙う」という手法を繰り返しています。

経済ニュースでも時折その名前が聞かれ、最近彼らの案件が軒並み評価額を避けざるを得なくなった、と言われています。

彼らが投資したことでユニコーン化したような企業もあります。投資元としてその名前があった場合は注意しましょう。

ラウンドシリーズも重要

最後にラウンドシリーズも重要です。

シリーズの定義はあいまいですが、大まかにはシリーズBぐらいが製品化で販売し始める、という定義のようです。他国(日本市場)に参入している時点で、シリーズCかD程度のラウンドになっているはずですので、その点も注目しましょう。

  • 各シリーズにかかった年数:早い年月でステージアップしている場合は急成長している可能性があります。
  • レイトステージかどうか:比較的早い時期(1~1.5年以内)にIPOを目標として事業運営されています。

というような観点で見ていくと企業成長度がわかりやすいでしょう。

まとめ

Pre-IPOという響きの中には「入社すればあなたにもストップオプションが提供される、かも!」「すごく成長してキャリアも伸ばせる、かも!」という期待先行の響きがあります。

ヒト、モノ、カネ、の観点で、日本市場の要望に耐えうるものなのかどうかを確認して、その後選考プロセスで見極めていってください。

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