できる営業というのは、初回商談で稟議申請までのイメージができている、と別の記事で書きましたが、それには事前準備が必要となります。
あるベテラン営業から聞いた話で印象的だったのは、
「毎年新年度が始まると、お客様にアプローチ開始するわけだけど、何を話して、どこで盛り上がって笑うのかまで、もう決まっているんだよね」
という言葉でした。
ターゲットリストが準備できたら、商談でいかに信用を勝ち取って案件化するか、案件を進捗させるかというために、準備物を用意しましょう。
たくさんあればよいですが、時間も限られているため、とくに4つに絞って説明をします。
準備物1)初回商談ヒアリングシート
初回商談において、聞かないといけないことをまとめたものを「初回商談ヒアリングシート」となります。
初回商談の目的は「案件化」させること
ですので、ヒアリングシートも「案件をして認められるために必要な情報を集めるもの」です。
- 取り組み事項はあるか、課題はあるか、問題はあるか、などの「ビジネス系質問」
- 予算はあるか、承認は誰か、想定ユーザーやトランズアクション件数などの「カネ系質問」
- 今使っている製品は何か、どの程度の満足度か、等の「モノ系質問」
などが該当します。
初回商談の時間配分の記事で書きましたが、このリストがあると抜け漏れがなくなり、時間オーバーで確認ができなくても後で電話で確認をすることも可能です。
準備物2)ペイン(問題)リスト
お客様の問題をある程度パターン化させて、MECEとしてチャート化させたものとなります。
MECEなどで掘り下げをする必要性は、
お客様が発言されるペインはたいてい表面的な事象である
ケースが多いためです。
例えば「チーム内の残業が多いことが問題なんです」といわれる場合。これだとチーム員のスキルか因、使っているツールの使いにくさか、業務自体が非効率であることか、はたまた他部署が実は納期遅延起こしているためか、等原因がいくつも考えられます。
会社内で「だいたいこういう課題や問題に対しては、うちは価値提案しやすい」というものがありますので、それを入社前に確認しつつ、自分なりに付け加えていきましょう。
準備物3)FAQリスト
FAQとはFrequent Asked Questions(よく聞かれる質問)というもので、回答まで含めた、よくあるQAという意味のリストになります。
営業活動においては、お客様との意思疎通時に、様々な質問を投げかけられる場合が多いです。商談やその後のメールでのやり取り、双方です。
その際に「すぐに回答が出せない」と信用も貯まっていきません。そのため、想定質問と回答のリストは事前準備が必要です。
「導入方法」「ライセンス体系とコスト」「仕様(スペック)」という一般的な情報はもちろん抑えておく必要がありますが、それ以外に重要となるポイントがあります。
FAQリスト重要ポイント①:競合製品との比較と優位性
「競合はどこになりますか?」というったものから、より具体的に「×××社とどう違うのでしょうか」、はたまた「競合他社と比べて、何が優位性になるのでしょうか」という質問になります。
競合を聞くのは、比べる材料が欲しいから。特に日本人は単一性が高い種族であるため、他者との違いをランキングなどで知りたがる傾向が強いです。
差別化や優位性は回答を用意すべき内容でもありますので、準備をておきましょう。
FAQリスト重要ポイント②:機能名の詳細な説明
「●●●という機能についてもう少し教えていただけますか」といった質問です。
最近は複雑な製品が増えてきたため、聞いたお客様が必ずしもその分野に明るくない場合もありますし、単にベンダー側が自分勝手に名前付けして一般的な用語とずれている場合もあります。
情報収集というよりも、受注においてキーとなるポイントの可能性もありますので、「誰でもわかる回答」(例えば、「非常に簡単に申し上げますと、●●●みたいなものです」等)を伝えるとともに、質問の背景は確認するようにしましょう。
FAQリスト重要ポイント③:ユーザーが当該製品を使いこなすまでに必要な、習熟期間
ユーザーが非常に簡単に使いこなせるようになるインターフェースを持つ製品が増える一方で、機能を豊富にそろえているものもあります。
機能紹介などをしていると、「とてもすべての機能を使いこなせなさそう」という印象を持ち、この質問をしてくる場合があります。
あるいは、実際に導入を想定しているケース。チームメンバーに使わせる場合にどの程度習熟工数が咲かれるかということを考えている、より前向きな場合もあります。
準備物4)オブジェクションハンドリングシート
最後にオブジェクションハンドリングシートです。
オブジェクションとは「反論」を意味し、お客様から自社製品や製品導入に対して出てくるネガティブな言葉です。
たとえば「こんな製品はうちには合わないよ」「今は必要ないよ」「既存製品で間に合っている」「値段が高すぎる」などの買わないための言い訳などです。
こういう発言に対して「ああ、そうですか」と引き下がっていては、何のために営業がいるかわかりませんし、商売になりません。また、そういう発言に対して「うっ」となり、何も反応できない場合も信用がたまらないことにつながります。
信用できる営業というのは
どのようなオブジェクションに対してもハンドリングができる
というところから発生します。
お客様から発せられるオブジェクションは大きく4つの「不」から来ると考えられます。それぞれに具具体的なパターンも併せて紹介します。
不信:会社、製品、営業パーソンに信用がない
例:知らない、わからない、理解できない
アポイント取得段階でよくありそうなパターンです。端的に実績や効果などを伝えるとよいです。
不要:必要でない
例:あまり必要性を感じない。ほかにやることがあり、そちらのほうが優先が高い。他社製品を使っている。事足りている。
まだ普及が進んでいない製品を紹介するときにありがちなパターンです。やり方は必要性を感じてもらうということになります。競合製品を使っているケースは、満足度合いを確認しましょう。100点満点であることは稀です。
不適:自分に合わない、使いこなせない
例:自社に合わない。スイッチングコストがかかる。価格メリットが少ない。ROIが出ない。価格が高い。
合わない理由を掘り下げて確認した方がいいです。学習コストやスイッチングコストの場合は、障壁を下げてあげる工夫を提案するのがよいです。価格については、高い安いはあまり根拠がなく、何かの比較だけで評価している可能性があります。提供価値についてもう少しヒアリングと討議を進めましょう。
不急:今すぐに使う必要がない
例:忙しくて検討できない。評価工数が取れない。
少し検討を考えている場合に出ます。コンペリングイベントを作り出すか、問題の顕在化と放置リスクを伝えましょう。
まとめ
初回商談をうまくハンドリングして、信用を勝ち取るには事前準備物が必要です。
逆にいえばだいたいこの4つの準備物があれば、すんなりと案件化を行っていくことができるでしょう。ネタに困る場合は入社後にほかの営業に確認することが最も早いです。