外資IT企業の営業であれば、必ず言われる「アカウントプラン」作成です。
アカウントプランの作成における重要な要素があり、それを外していなければ有効なものになるでしょう。
アカウントプランの目的 – アカウントマネジメントとは
アカウントプランですが、目的をはっきりをさせないと「単なるアカウント解剖資料」で終わってしまいます。
その目的/目標は、
「担当アカウントのTAMにおいて、自社ソリューションの売上を最大化すること」
と考えましょう。
ここが合っていないと、いくら作っても社内で以下の弊害が生じます。
- 上層部から満足感を得られない(「もっとできるないの?」「Think Bigはどこへ?」等)
- 関連部署との合意がしづらくなる(「ほかの部署の展開は?」「あの領域まだだよね」等)。
TAMについては、ソリューションのライセンス体系(課金体系)によって、変わります。
「該当企業で推定される総TCO金額」
「年間IT投資額の2割(新規開発投資分)」
「全従業員数に対しての自社ソリューションを使う対象人数」
システムによっては「トランズアクション数(顧客が何かしらの取引においてやりとりする件数)」や「セッション数(1つのセッションの開始から終了まで)」とすでに確定している場合もありますが、最初から最大件数で契約しないこともありますので最大値で考えましょう。
TAMの目安ですが、アカウントプラン作成する対象企業は、業界内あるいは自分のテリトリー内で最も大きなアカウント2-3社となり。
金額の目安はおおよそ十数億円から数十億円、ときには数百億円になります。
肝となる構成要素
実はアカウントプランの中身は決まったものがありません。
勤める企業によってテンプレートがある場合が多いです。
また、テンプレートがあっても、本社の上層部の入れ替えがあると「こんなプランではだめだ」として、中身が変わる場合もあります。
日本法人の上層部が要求するものと、本社が要求するものにギャップがある場合もあります。
しかしながら、どのようなテンプレートであっても「必ず入れるべきスライド」というものがあります。重要度順に述べます。
・組織図と役員リスト
意外かもしれないですが、まずは組織図をあげました。
理由としては、「どの部署にどのようなアプローチで攻めていくか」という具体的なアクションを決めるための白地図が必要であるためです。
組織図もわからないのに、どこからどう売上があげるかなど戦略も作れないでしょう。
知らない方も多いですが、海外では自社の組織図をHP上で公開することは非常にまれです。
理由は年度内で組織構成はどんどん変わるからです。しかしながら、日本企業の場合はそのほとんどが組織図をHP上で公開しておりますので、非常に楽です。
コツとしては、画像コピーなどで転記しないこと。
一度PPT上で図形などからすべて一から作ってみることがよいでしょう。
組織構成がわかると、なんとなくその企業の業務の仕方がわかります。また「この部署名の人たちはどのような業務をしているのだろうか?」と次に調べるきっかけにもなります。
組織図ができたら、今度は役員を当てはめていきましょう。大きな企業であれば、取締役や執行役員レベルまで担当部門とともに記載されています。
もう一歩進めると、本部長や部長なども入れるとよいです。日経新聞の人事異動や、異動ニュースウェブなどで確認することが可能です。
DJも組織図がHP上で公開されていない、ある通信キャリアのアカウントプランを作成しなければいけなかったさいには、異動ニュースを過去2-3年全て調べて、そこに記載のある部署名から組織図を一から作ったこともあります。
もしまったく組織図が入手できない場合においては、「お客様にお願いしてみる」ことがよいでしょう。テクニックとしては「ある程度は自分で作成した後に、”過不足がないか教えていただけますか”と聞く」という方法がよいです。
「一から教えてください」というよりも積極的に教えていただけます。
ターゲットリストがある場合はすでにある程度組織図が頭に入っていますので、すぐに記載をすることができます。
各部署へのアクション一覧
次に作成した組織図をもとに、どこにいつまでにアプローチを開始するかという一覧表を作成します。
一覧表には、
部門長名
部門名
提供価値
アプローチ状況
想定案件金額(すでに発掘済の場合は案件金額)
クローズ時期
などが項目として並びます。付け加えるなら競合情報でしょうか。
アクションが次に重要となる理由は、
組織図作成で全体感の担保を行い、そこからいつまでにいくら稼ぐのかという現実感の担保を行うべき
だからです。
もちろんSWOT分析の結果などをバックアップスライドとして載せてもいいでしょう(「こんなにうまくいくの?」という内容への説明)
とにかく具体的なアクションとスケジュールを記載しないと動けないのが人間です。
実際に動いた後にうまくいかなくて修正せざるを得ないことも多いでしょうが、それで問題ありません。営業は常に限られた情報で動かなければいけませんので、躊躇しているよりは先に動いてしまった方がいいです。
・担当アカウントの業界動向、過去5年の業績推移、中期経営計画
最後に、業界動向や業績推移、中計などを記載します。
「え?これが一番重要ではないの?」と思われるかもしれませんが、作成するのは最後で問題ありません。
もちろん「お客様を知る」という観点で中計把握は必須ですし、提案書にも記載する内容ですので知っておく必要はありますが、組織図とアクション一覧に比べると「全員が知っている内容」であるため、重要度は低めとなります。
ここでのコツは、別記事でも記載した5Cで考えることです。
1つの企業の中計だけを抑えてもあまり意味はなく、その企業の強豪となる別の企業の中計や、業界全体の動向、その中での業績推移(好調であっても、単に業界自体の市場が多くなっているためか、新規ビジネスが伸びているためか、等)をとらえていく必要があります。
それによって何が響きやすいのか(つまり予算が取りやすいのか)を筋道立てて導き出すことが可能です。
ほかのエッセンス
ほかは各企業で必要と言われている内容を付加すれば問題ないでしょう。
アカウントプランは作成すると後が楽
一度作成をしてしまえば、あとは都度リバイスをするだけですので非常に楽です。
外資系だと「あのアカウントどうなっているの?」という突っ込みが、上からでなく横からもよく降ってきます。
その際にアカウントプランを見せながら、「今こういう状況です」といえるとお互いの時間を省くこともできるのでとても効率的です。また上や他部署からの印象もとてもよくなります。
注意点として、数十社以上の企業が自分のテリトリーにある場合です。
その場合はすべての企業でアカウントプラン作成を行うとかなり疲労しますので、キーアカウント2-3社のみにしましょう。
まとめ
TAMに対するSAMの最大化を目標として、社内の上と横との連携をうまく図ために作成するのがアカウントプランです。具体的な施策とスケジュールが刻まれたものであれば、チーム一丸となって対象アカウントを攻めることができるでしょう。