別コラム記事「人は人から買う」で述べました通りです。
B2Bという企業法人が相手の営業であっても、人の集合体であるため、人が重要になります。
その人はどんなインセンティブ(誘因)をもって意思決定するのでしょうか。
Value Based Sellingでも触れられているとおり、価値には2つの価値があります。
Business ValueとPersonal Valueです。
案件を進めるうえではどちらも必要ですが、この2つの価値をわかると「人を落とす」こともできるよういなります。
MEDDICと組み合わせれば、優秀な営業はとくにEconomic BuyerとChampionのPersonal Valueを掴みに行きます。これは、いわゆるB2B営業系の書籍にほとんど書いていない手法であるので、社内外のライバルに差をつけるためにもとても重要です。
Valueとは欲求の裏返し
まず日本語で少し捉えにくValueです。直訳すると価値や価値観となりますが、より理解しやすい1つの捉え方として
「価値・価値観=欲求の裏返し」
と考えるとよいでしょう。
例えば売上を上げたい、とすれば売上拡大貢献が価値となります。お客様に知ってもらいたい、であれば認知度向上支援が価値となります。
自社製品の購入検討には、価値の明確化が必要ですが、どの価値が響きやすいかは周りの状態や成長・ライフステージによって変わります。これをわかって動いているか、そうでないかでお客様との握り(合意)に大きな差がでてきます。
Business Valueは企業内で重視されている価値観
Business Valueはあくまでビジネス面での価値です。
「企業人として勤めるお客様が何に重きを置くか」
となります。
企業の状態によって大きくことなります。一例として
- 売上拡大
- 利益確保もしくはコスト縮小
- リスク逓減やセキュリティ強化
- 人材育成(後継者育成含む)
- 資産効率向上
- 業務効率化
- 基盤強化
- ケイパビリティ強化
などが当たります。
Business Valueにおいて重要なことは、ビジネス方針・戦略・計画・施策との関連があることを理解し、
「優先順位が存在する」
ということを知ることです。
イケイケドンドンの状態であれば売上貢献できることが優先高いでしょうし、売上低迷期の場合は利益確保や資産効率向上となるでしょう。現在のようなDXブームの場合は、内部業務DXの面で、ケイパリティ強化や業務効率化が重要となります。
相対するお客様がどのような優先順位で指令を受けているのかを確認しましょう。
重要:Personal Valueはビジネスよりの個人欲求や動機
Personal Valueをわかって動いているか、そうでないかによってお客様との握り(合意)に差がでてきます。
なぜならば、
「人は自分のためにはとても一生懸命動く」
からです。
個人の欲求とすると定義が非常に大きくなってしまいますので、これはある程度限定して
「企業人としての個人欲求や動機」
としましょう。
例としては、
- 偉くなりたい、出世したい
- カネが欲しい
- 上や周りから認められたい
- 部下から慕われたい
- 楽したい
- 早く帰りたい
- 家族に自慢したい
- 怒られたくない
- 自由になりたい
などです。
Personal Valueの背景と攻め方
そんな単純なのかと思いますが、企業人であってもロボットではありません。感情と伴う人間ですので、「●●●したい」という思いはいつも抱えているものです。
古来から、戦わずしてかつ戦略家が多用する方法ですが、金銭的なインセンティブだけでなく個人的なインセンティブを使って、同盟を実現したり、人材を重用しています。
偉くなりたい、出世したいは当然ですね。認められたいも同じです。こういうPersonal Valueを持っている方には「自社製品を導入して結果を出せば偉くなりますよ、認められますよ」という提案が効きます。
楽したい、早く帰りたいなどは、業務効率化でしょう。部下から慕われたいということも、「このシステムを入れたら現場は喜びますよ」という提案はよく効くでしょう。
家族に自慢したいなんていうのは、現在のお父さん事情が垣間見えますが、事例公開や子供がよく喜ぶ著名人ネットワーキング提供などがよく効きそうです。
怒られたくないというのは企業運営側部門の方がよく持つものです。とくにシステム部門の場合、システムが止まったり、追加投資申請をあげたりということがよく起きますので、ユーザー部門からは「システムが止まったら仕事ができないじゃないか」といわれますし、経営層からは「またお金使うの?前と言っていたこと違うじゃないか」とクレームを言われます。経理財務部門でも決算報告やレポートに誤りがないようにすべきと神経を使う仕事です。
自社製品の導入を行うことで、上のいづれかが満たされるならば、どのような反論や突込みが社内から出ようともひるまず稟議申請まで上げるようになります。
Personal Valueの見つけ方
COVID19感染拡大した2022年3月前は、食事会やゴルフなどでいくらでも確認ができました。今の時代はミーティングでみつけていくかないでしょう。
Personal Valueの見つけ方は、ミーティングでも十分可能です。難しいと思われるかもしれませんが、これも慣れです。
ある程度何を重要視しているかを確認しながら、その言葉から内容を類推するのが1つ目の手法です。たいてい誰もが上に上がりたいと思うのは当然ですので、そこからあたりをつけることもよいでしょう。
他では事例を使って「A社の〇〇さんはこの事例で●●●賞をもらったんです」という裏のストーリーを話して反応を見る、などがあるでしょう。
また、経歴などを聞いて弱点を見つける、なども有効です。
歴代の社長が勤めてきた部門に共通点があればその部門は出世コースといえます。大きな部門の場合はその部門で出世をすることが重要となります。提携している超有名大学との社費MBAを通過している、などが隠された条件の企業もあります(補足:最近はトップ人事において、傍流で過酷な子会社再生などを経験してきた方がごぼう抜きで社長になるケースもだいぶ増えてきましたので、傍流といっても実は光る人材がごろごろしている可能性があります)。
好みから導き出すことも有効ですね。何が好きか=何に弱いかといえます。子供が好きならば、子供に弱い。おいしいものが好きならばおいしいものに目がない、となります。
1点注意点として、趣味は気を付けましょう。どの趣味の世界でも、内容はとても深く、長年の経験を持たれている方の場合はほとんどプロに近いスキルレベルや見識を持たれています。少しかじった素人が変に話を振ると「わかっていないね」と飽きられてしまいます。自分がセミプロに近い趣味をもち、それがお客様と共有であれば、使っていただいてかまいません。
まとめ
営業活動においてはBusiness Valueだけではなく、Personal Valueも重要となります。また営業パーソンとしても、相対しているお客様を人間として扱うと、また一味違った営業活動になるのではないでしょうか。ぜひPersonal Valueも確認をして提案をしていきましょう。