外資系企業に勤めますと、ロジカルな提案や論理的な説明を求められることが多くなります。
そこで登場するのがフレームワークやメソドロジーなどになります。一般的な3Cや4P、ファイブフォース、SWOTやなどが有名ですね。
一方でそういったものを使わない人もいるでしょう。「ただの理論でしょ?現実は違うよ」などという意見ですね。あるいは「よくネットや新聞で見かけるけど、そもそもなんなのかよくわからない、だからあまり使わない」という場合もあるでしょう。
フレームワークの理解こそ急成長のカギ
フレームワークとは一体何でしょうか。世の中では、フレームワークだけをまとめた書籍もあるぐらいです。
DJはフレームワークとは
「望む結果に対して要因があると仮定して、主要因だけを抽出したもの」
と単純に考えています。
ビジネスで使われているフレームワークは、その多くが、各領域で長年の研究経験がある大学教授や先生方、あるいはコンサルタントがフィールドスタディあるいは現地調査などを経て、結論として導き出したものです。
たとえばマーケティングの3Cですが、これはC=Company(自社)、C=Customer(顧客)、C=Competitor(競合)、ですね。
これをどう受け止めるかというと、顧客の状況、競合の状況、自社の状況の3つによって、自社が勝てるかどうかが決まる、ということになります。逆に言えば、3つの要素以外は無視してしまってよいわけです。
4Pもそうですね。Product, Price, Promotion, Placeですが、これも「どの製品をどの価格帯にしてどのように宣伝してどこで売るか」だけ。それ以外は無視してもいいわけです(たとえば製品の機能など)
ビジネスはいつも不透明。だから枠組みが役に立つ
勘のいい方はわかってきたかもしれません。
そうです、よくわからない、不透明、あるいは初めて参入する場合こそ、フレームワークが真の力を発揮します。
その分野での長年研究されつくした結果から導き出された知見ですから、フレームワークを使って現在の状況をとらえた方がより効率的なわけです。
たとえば、営業活動においてもいくつもフレームワークが存在します。
紹介をした製品やサービスが受注するまでには非常に多くの要因が重なり合っています。
細かい変数としては、50から100程度あるのではないでしょうか。しかしながら、それらをすべてカバーするだけの時間もリソースもあるわけではありません。そのため、フレームワークにのっとり、必要な要素だけに力を集中することが重要になるわけです。
補足:これはアナリティクスの世界でもそうです。基本的にある特定の結果に対して大きな影響を与える変数は3-4のみで、分析においても7-8に絞るのが通例です。
捨てることはなかなか勇気がいりますが、小さい力で、かつ短期的に数字をあげるには、必要なアクションだけをおこなっていくことがとても重要になります。
とくに使えるフレームワーク厳選
とくに外資IT営業で使えるフレームワークは以下の通りとなります。ピンク色が活動前に上位レベルで分析を行うもの、黄色が営業活動中に現場レベルで使うもの、となります。青は全体感を理解するために必要なものです。
・ランチェスター戦略
戦闘から導き出された「弱者の戦略」といわれる戦略方法です。ゲリラ戦法の元にもなっています。常に後発として日本市場に参入する外資系企業はドメスティック(国内)競合との戦いから始めないといけません。それもより極端に少ない戦闘力で、です。少しづつ勝利を収めるために弱者がやるべきことがわかります。
・3C分析(顧客側のC(Competitor)とC(Customer)も加えて5C分析のほうがよい)
特定のアカウントを戦略的に攻めたい場合は、ぜひ一度PPTなどに落とし込んで作成をしてみましょう。お客様がどのような企業戦略で実施されているか、自社は何を提供できるか、他社は何を提供しているのか、などを考えながら作成をしていきます。
・SWOT分析
分析としてはかなり王道です。HPなどは書きまくるみたいですね。S=Strength(自社の強み)、W=Weakness(自社の弱み)、O=Opportunity(機会(チャンスでもよい))、T=Thread(脅威。競合や市場の冷え込みなど)に分けてマトリックスで記載します。重要なのは、内部環境と外部環境の軸を忘れないことです。SWOTがかけるようであれば、営業としてある程度の準備はできている、といえるでしょう。
Value Selling Associateから出されている提案するためのフレームワークです。このメソドロジーを活用するITベンダーはメジャーなところから小規模なところまで多数あり、知っているのといないのとではだいぶ異なります。コツとしては、PPTで作成する提案書のベースをVSとすることです。そうするとそのまま提出ができますので、効率的です。
・SPIN
これは意外と知らない人も多いのではないかと思いますが、古典的な手法で外資系では活用されます。DJは、初回ミーティングはよくこの流れでミーティングを進めます。S=Status(状況)、P=Problem(問題)、I=Implication(示唆), N=Need Payoff(解決)となり、それぞれの質問を行います。
簡単にいうと「今のご状況はどうですか?このような問題はないでしょうか?この問題は重要ではないでしょうか?その問題が解決されたらどのようになりますか?」という流れで常に質問を行うわけです。
・BANT
もともとIBMが考案したと聞いています。チェック項目のような形で使います。B=Budget (予算)、A=Authority(予算権限承認の権限)、N=Needs(必要性)、T=Timeframe(時期)、です。とくに見込み客に対してスクリーニングする場合に使われます。
ここ数年はインサイドセールスが流行ってきたこともあり、外資系ではインサイドセールスチームでよく使われるフレームワークです。内資系でもベンチャーのSaaSなどはよく使うのではないでしょうか。アカウントを担当するアカウントセールスは、あまり使わないかもしれませんが、意外と「予算もないのに見込み客の良い反応だけを頼りに案件化してしまう」場合もありますので、心にとどめておきましょう。
・MEDDIC (最近はMEDDPICCに進化していますが、DJはOld SchoolのMEDDICが好き)
知らない人いるかもしれないですが、個人的には超使えるフレームワークです。3D CADベンダーで、かなりアグレッシブな営業として外資IT業界で有名なPTCが編み出した手法です。PTC出身の方には何名もお会いしていますが、皆さん超優秀で、一騎当千のバーサーカーみたいな人たちばかりです。チームマネージャーとしてPTC出身者が1-2名いるだけで、結果に違いがだいぶ差がでてきます。
M=Metrics(定量効果)、E=Economic Buyer(予算権限者)、D=Decision Process(意思決定プロセス)、Decision Criteria(意思決定クライテリア)、I=Identify Pain(痛みの特定)、C=Champion(チャンピオン)となりますが、超使える手法のため、後日別記事で詳細は説明していきます。
・Target Account Selling
こちらは特定のアカウントに対して使う手法となります。顧客企業の組織図と社内政治状況を把握し、自社ソリューションに対して、顧客企業の誰がどういう分類なのかを常に分類して、アクションを決めていく方法です。業界TOP2-3社のみを担当する製品や、1つの企業に対して数億~数十億規模の契約を維持あるいは追加拡大する形態の企業ではとても有効なものです。
一番有効な局面は、社内の合意形成でしょう。TAS(タス)ベースのアカウントプランを常に、本社役員から日本法人内で協業するエンジニアまで、いまの状況がどうなっているのか誰でもすぐにわかります。逆に言えば、数十社担当をするような営業の場合、すべての企業でTASを作成すると絶対に回らなくなりますので、要素だけ記載するか、やらないか、の選択をしたほうがいいでしょう。
・The Model (ザ・モデル)
いわずもがなのベストセラーです。現在Japan Cloudにいらっしゃる福田康隆氏による著書でも有名です。Sales Force、Marketoと外資ベンチャーを日本で立ち上げた根本にはこの考え方がありました。この内容の秀逸な点は、リード創出から案件クローズまでをプロセスとして1つの形で見える化したこと、ではないでしょうか。見える化すれば、どこが問題となっているかがすぐにわかり、手を打つことができます。いまや数あるSaaS企業のバイブルとなっており、読まれている方も多いでしょう。
外資IT企業の多くがこのプロセスを採用しているため、深く理解をしておくと、各機能部署との調整でとても役立ちます。