外資系にチャレンジしたい方は、その理由の多数を占めるのが「年収」でしょう。
気持ちは重々わかります。
DJは新卒から数年間日本企業に勤めておりました。仕入先として外資系企業の方々との付き合いがあると、
同じ負荷と質の仕事をしているのに、この年収の差はなに?
雑用はこちらがやっているので、むしろ向こうの方が楽なのでは。。。
という思いがふつふつと湧いてきます。
人生のすべてはお金では測れませんが、不幸を選択できるのもお金です。
そんなにお金に重きを置いていいのかと不安に覚える方は、「営業に対する給与の支払いをもとに、企業が営業にどう価値を置いているか」などを説明した記事は別で書いております。今後の参考にしてください。
年収(OTE)の構成
年代別年収目安の説明の前に、年収の構成を説明します。
年収はOTE(=On-Target EarningもしくはOn-Track Earnings)といわれ、ベース給与とインセンティブ給与を合わせたものです。より分かりやすく言えば、営業予算を100%達成した場合の給与となります。
ベースとコミッションの比率は、たいていが「50:50」もしくは「60:40」となります。
たとえばOTEが1,500万円で60:40の場合は、
例:OTE1,500万 で60:40
ベース給与 = 900万円
コミッション給与 = 600万円
営業予算 = 2億円
コミッション率 = 3% (600万円 ÷ 2億円)
となります。
50:50のほうが不利なようですが、その分予算配分などは考慮されるため、どちらがいいかは一概に言えません。
コミッション率を記載した理由は、自分の営業予算の基準がわかるためです。例で記載されている3%は平均的な数字です。入社年度最初のケースについては、5~6%の場合もあります。
魅力は100%達成以降のアクセラレター
もちろん、年収確保のために営業予算100%達成は必要ですが、それ以上に魅力なのは100%達成以降の「アクセラレーター」です。
ニンジンをぶら下げらているようにも感じますが、その分報酬として跳ね返ってきます。
アクセラレーターの設定は各社によって異なりますが、今までの経験や他社営業から聞いた話では
通常コミッション率に%が追加される
が通例です。
先ほど3%の例の場合、追加%が5%などと設定されます。
2億円達成以降は、1円につき0.08円支払われます。2,000万円行うと追加160万円。5,000万円行うと追加300万円です。そのため、外資IT営業は皆さんこのアクセラレーターを狙っていきます。
OTE以外:追加インセンティブ
これ以外に、四半期や年ごとに特別に設定される追加インセンティブなどがあります。
たいてい企業は第一四半期(Q1)のFast Start狙いや、業績好調であった四半期の次の四半期の揺り戻し回復、最終四半期での積み上げ、などのために設定がされます。
たとえば
「戦略製品を売ると、売った金額に対して●●%提供」
「複数年契約に対しての追加%提供」
「年間目標の何%達成した営業には追加契約金額ごとに追加%提供」
などになります(だいたい四半期の中ごろや最終月に社内発表される場合が多く、強者は数字達成を着々と行いつつ、これらも追加で狙うためにフォーキャストコントロールをしたりします)
その年にもよりますが、おおよそ年間で追加100-300万円ぐらい稼げるようなイメージです。
そのほか:ストック系
もちろん企業によっては株式提供というものもあります。RSU(Restricted Stock Unit)やESPPなど、いわゆるストックオプション等です。ESPPは日本でいう持株会みたいなものですね。
注意点として、どれも確定申告が必要となりますので、税金の追加支払いは念頭に置いておきましょう(給与年収が2,000万円を超えると会社では年末調整処理してくれず、確定申告が必要になりますので、いづれにしても行う必要があります)
金額としては、オファー次第ですが、追加で数百万円前半を複数年にわたって処理する、というところではないでしょうか(もちろんもっともらえる場合も有ります)。
年収 – 20代編
以下の情報はあくまで目安となりますので、参考程度にとどめておいてください。
また2022年下半期の最新数字となります。21年後半から外資系企業採用市場においてインフレが起きており、どこの企業も軒並み高給提示する傾向にあります。
IC Role(=Individual Contributor。部下を持たない担当者)としての給与が前提です。
それでは具体的に年収目安を提示していきます。
新卒:年収450~600万円
外資系は中途採用だけではなかった?と思われるかもしれませんが、300名以上となった外資系日本法人では新卒採用を行います。半分インターンのような形でトレーニングに重きを置く場合もあります。
別の観点で、大規模になっている=志望者も多い、ということになりますので倍率が高いケースが多です。新卒から外資系を受けようというマインドがありますので、それなりに優秀な人間が志望者に名を連ねるため、単純な倍率よりも競争率は高い可能性もあります。高学歴や試験でのスコアが高いなど、それなりの対策が必要です。
給与はおおむね高給といわれる日本企業と大きな差は生じません。外資系企業だと新卒採用は「投資」とみていますので、それほど給与が払われるわけではないです。ベース給与:インセンティブ給与についても、80:20や70:30など未経験を加味したところが多いでしょう。
インセンティブ比率は数年経験がある中途採用とは異なるため、注意が必要です。予算を大幅達成すれば、大台といわれる1000万円を超えることも夢ではありません。
5年選手:年収800~1,200万円
経験次第ですが、27歳ぐらい、30歳前でも目標とされる大台(1000万円)突破は十分可能です。
このあたりから中途採用がほとんどとなり、ベースとインセンティブも60:40や50:50となります。この年代は50:50が多いかもしれません。ほかのシニア営業と比べると営業予算もそれほど多くはなく、達成しやすいのではないでしょうか。
若い時から外資にチャレンジすることは大いに結構です。早めに営業手法を習得することによるアドバンテージもあります。次のキャリアステップを目指せるのが早いことも利点です。営業活動としてもとにかく行動量を高く維持して、経験を積むことがよい時期です。
年収 – 30代編
30代ですと、だいたい1,300-1,500万円ぐらいが閾値になります。
10年選手:年収1,200~1,600万円
このあたりから外資に挑戦される方も多いのではないでしょうか。DJもこのパターンです。
内資ですと営業チームリーダーや課長職などを数名の部下マネジメントを経験している場合も多いですね。ですが、「このまま10年後に部長、20年後に役員となって、年収もわかっている仕事人生いいの?」などと迷いが生じる時期でもあります。
世間一般から見て給与が高い反面、それなりに高い質の営業が求められます。10年選手ぐらいから「私は営業です」と世間に言えるレベルであるためです。
能力面は、アカウントプランニング、仮説構築と価値提案、お客様の信頼を得るための話し方/立ち振る舞いが必須です。行動量は、20代のころよりは幾分か減るかもしれないですが、質と感性が向上し無駄打ちが減るためであり、より大きな結果を出すことができます。
自分で考え、責任を持ち、意思決定し、行動に移すことができることが必要です。
外資系を経験している場合は、悲しみや悔しさも少なからず経験しているため、お客様のいうことをそのままに受け止める甘さも、上から投げかけられる言葉に心を動かすピュアさも、もはやないでしょう。
15年選手:年収1,800~2,200万円
外資IT企業を渡り歩いている方も多いでしょう。経験値によって幅は広がります。
10年選手の必要能力とアクティビティに加えて、相談を受けて適切な示唆を与えるコンサル力や、世の中の潮流や経済、社会構造などを討議するエコノミスト力が必須です。企業単位のアカウントプランニングではなく、業界ごとやときには国単位でも産業構造をとらえることができ、1つの大きな受注をほかの5つの大きな受注(同業界や同部署)につなげることができます。
お客様の現場の方々の信頼を得るだけでなく、経営層とも「切った張った」ができる(討議だけではダメ)胆力も備わっています。文化や歴史、宗教に知識があり、語ることができる広い知識も必要です。
営業だけではなく、マネジメント、マーケティング、人事、法務、オペレーションなど、周辺部署の知識もあります。
年収 – 40代編
20年選手以上:年収2,000~3,000万円
40歳を超えている場合、2,000万円を下回る給与はあまりないでしょう。もちろん3,000万円でとまるわけではなく、役職もつくと4,000万などにもなります。
役職がついている場合は部長(Director)や本部長(Senior Director)などで、10名~30名程度の部下とそれに合った営業予算を持っています。
このレベルでもIC(Individual Contributor)で頑張っている方も大勢いらっしゃいます。お客様と直接対話を重ねていきたいという志向を強くお持ちの方や、マネジメントはあまり好きではないと考えている方ですね。また前職ではマネジメント職であったが、報酬がよいのでICに戻って活動するという場合もあります。
15年選手以上との違いは、「とにかく大きな案件を取る」という要望です。大きな案件というのは企業によって異なりますが、年間契約金額で数億円から十数億円です。お客様に対しても日本本社だけではなくグローバル全体で、もしくは親会社だけではなく子会社すべてに、などに提案をする力が問われます。
転職においての交渉など
転職においての給与交渉は、エージェントさんに任せるのが一番良いでしょう。
考え方は「ベース給与」がもとになります。内資からの転職ですと、ベース給与が高いため、それをもとにOTEが逆算で決定されます。さきほどの50:50や60:40も落とし穴ではあって、60:40から50:50の構成に転職しようとすると、OTEが予算オーバーとなってしまう場合もあります。
その場合に企業がよく提示するのがRSUなどになります。RSUも制限事項が会社によって変わりますので、金額だけではなくGranted, Vestの頻度などは必ず確認をしましょう。数百万円のRSUはもらえたが、年1回のみ、4分割での提示ということであれば、4年間はその企業に勤めていないと消化できないことになります。
まとめ
外資IT企業においては、日本企業に比べるとインセンティブ分がしっかり設計されて、かつ大きいということが言えます。歩合率が高いということですね。大きな成果を出せば、その後はたくさんのインセンティブに跳ね返ってきますので、夢のある職業でしょう。
求められるレベルも高いものを求められますが、営業職は日本企業であれ外資系企業であれ、どちらも結果を求められる世界です。奥が深い営業という役割では、どうせ日々研鑽しなければいけない世界です。それであれば報われるほうがいいのではないでしょうか。