ニール・ラッカム氏が開発したSPIN sellingです。
SPIN話法ともいわれます。
4つのシンプルなヒアリング手順に従って商談を進めることによって、大型商談も受注できる、という手法になります。
DJがこれを挙げた理由は、使ってきた経験から
「特に初回ミーティングで多用できる」
ためです。どのような流れで進めていけばいいのか段取りがわかるようになります。他のメソドロジーと合わせて使うと非常に有用です。
初回ミーティングの段取りはこちらですが、このとても重要な場面において威力を発揮します。
SPIN全体的な流れ
ヒアリング主体の話法がSPINです。
DJの観点では
「お客様に自分の言葉でしゃべっていただき、自分で自分事として認識していただく話法」
と考えています。
内容は
S=Status:状況質問
P=Problem:問題(提起)質問
I=Implication:(問題の重要性)示唆質問
N=Need-Pay Off:(解決された状態の)想起質問
の順で行われ、スピンといわれるようにこれらを繰り返していきます。
たとえば、
S=「ご状況はいかがでしょうか」
P=「●●●ということにお困りではないでしょうか」
I=「●●●は実は深刻な問題かもしれません、いかがでしょう」
N=「解決した場合はどのようなイメージでしょうか」
という流れになります。
もう少し詳細なフローを示すと以下の通りとなります。
SPINの踏ん張り所 - (I)示唆質問の重要性 –
SPIN有用性の大きな特徴としては、
I=(問題の重要性)示唆質問がある
ということです。
ここは「踏ん張る」ところです。いったんブレーキングをかけましょう。
問題提起→解決策提示、の流れは断りを受けやすい
理由の1点目は、
「どういう状況ですか?」→「問題は何ですか?」→「こういう解決法はありますよ」
という流れにすると、「いや、結構ですよ」というお断りを受けやすいです。
人間は、一見論理的であっても不自然な流れで、何かを強制されると反発する、感情がそなわっている生き物です。すぐに解決策の提示はしないというスタンスが重要です。
また、お客様が自分事にまだなっていないということも言えます。
すぐに解決策を提示すると、案件滞留や競合への敗北につながる
理由の2点目は、B2B営業特有ですが
案件滞留したり、競合に負けやすい
ためです。
DJが何名かの営業やチームメンバー(部下)のミーティングに同席した際に発見したことは、案件が滞留したり、競合に負けたりするのは、示唆質問まで至っておらず、いきなり解決策の提示に移ってしまっているケースがとても多い、ということです。
何が起きてしまっていたかというと
状況や問題をヒアリングしているが、自社製品が勝てる内容に持ち込んでいない
でした。
状況や問題点のヒアリングは、現在のB2B営業であればどなたでもやっていることですが、示唆質問でさらに深いヒアリングにしていきましょう。
示唆質問パターン
DJオリジナルですが、示唆質問には以下のパターンがあります。
- より深い問題点を踏まえた示唆質問
- 優先順位付け(重みづけ)を変更するための示唆質問
より深い問題点を踏まえた示唆質問
まだ製品検討をしていない初期段階、あるいは世の中にあまりまだ出回っていない新領域のソリューションを提案する際によく使います。お客様自身も課題について認識が薄く、その重要性がわかっていない場合が多いです。
「まだ優先順位が低いんですね」と引き下がってしまっていては営業として何をしに行ったのかとなってしまいますが、「ぜひ一緒にやりましょう」ではお客様は動いてくれないでしょう。
お客様から聞いた状況と表面的な問題点について、因数分解をして、より深い問題点を提示するとよいでしょう。自分のことが意外と見えない、のが人間であり、外側から客観的に分析をしないと本当の問題点がわからないものである場合が多いです。
優先順位付け(重みづけ)を変更するための示唆質問
2.は、問題点はある程度明らかになっているが、自社の強みになっている要件の優先順位が低い場合に使います。
問題点はその後に要件となるケースも多く、要件になった瞬間に優先順位付けがお客様の中で開始されます。
現在は機能性も同じような製品が複数あるのが常で、何かしらの製品を選定するさいに要件と重みづけ(優先順位ともいえる。重要な要件項目ごとに点数比重を変える)がつけられますが、正確な優先順位付けや重みづけができているかといえばそうでないケースも多いです。
示唆質問は、自社の強みが評価される要件の優先順位を上げる手法といってもよいでしょう。
いまこそSPINが重要になる意味
ヒアリング主体となっていることは、今のB2B営業全般的に当たり前でしょう。
それをしておらずマニュアル通りのスクリプトに沿って挨拶も早々に製品説明に入るという流れを行っているのであれば、すぐにやめておきましょう。
会社の指令がそうだとしても、最初の5-10分はお客様にしゃべっていただくことがよいです。そのため、最初の状況質問については、皆さんも行っているかと思います。
問題(提起)質問も同じかと思います。
だいたい自社製品が解決できる問題を聞いていくのではないでしょうか。問題質問での注意点は「あなたの仕事や会社には問題があります」と、さも欠点だらけですよね?というスタンスで臨んでしまうことです。
お客様は営業に対して、何かしらの示唆、提言、知見を期待しておりますので、そのようなスタンスをもって質問をされると反感を覚える場合があります。
そのあとの示唆質問のやり方が、売れる営業と売れない営業との違いのひとつにになると思います。
まとめ
SPINは単なるヒアリング手順ではなく、自社が勝てるような土俵にお客様を正しく導いてあげる手法です。ヒアリング形式になっているのはお客様が自分の言葉で話すことにより自分で認識することを狙っています。
一度自分でよいと考えた内容は、なかなか自分では覆せないものです(「自己正当化」の心理をうまく使っています)。
特に示唆質問の質を上げて、できればチーム内で具体的な質問言葉や想定回答などをリスト化しておくとさらによいでしょう。